「1人で全部つくれる人=フルスタックビルダー」がいればPM/PMOが不要になるかも。ではその人は実在するのか

JQ NOTE 考察とアイデア

監修者・ライター情報

下田 幸祐

JQ 代表取締役社長

早稲田大学政治経済学部卒業後、アクセンチュアを経て株式会社JQを設立。大手企業の新規事業の戦略立案、スマホアプリや大規模システム開発のプロジェクトマネージャーを歴任。AI・IoTを活用したサービス開発などのDX案件、デジタルマーケティング基盤構築、大規模開発案件に実績多数。自社Webサービスの企画・開発・運営も行う。著作に「本当に使えるDXプロジェクトの教科書」(共著/日経BP社)。記事執筆、公演も多数。

フルスタックビルダーという言葉を聞いたことがあるでしょうか?
2025年1月にLinkedInのCPO(Chief Product Officer)のTomer Cohen(トメル・コーエン)が提唱した概念です。(LinkedInの投稿はこちら

そして2026年6月にMicrosoftのSatya Nadella(サティア・ナデラ)がYC AI Startup Schoolでこのフルスタックビルダーの概念を紹介したことで、一気に広まった気がします。

Tomer Cohenは、LinkedInでは、Associate Product Mangerという役職を廃止して、Associate Product Builderという役職を作ったとしています。

これは、これからのプロダクトマネージャーは、プロダクトをマネージするという役割ではなく、ビルドする役割に変わっていく、ということだと理解しました。

フルスタックビルダーとは、ざっくり言えば、ビジネスの要求もデザインも開発も1人でこなせてしまう人のことだと思います。その人が1人いれば、1人ですべて完結してシステムを作れてしまうので、PM/PMOはいらない、ということになります。

フルスタックビルダーとは

フルスタックビルダーとは、改めて整理すると、以下の3つの要素を併せ持った人だと思います。

  • ビジネス
    • ビジネス推進、つまりどんなシステム・プロダクトにしたいかの要求を考えられる
  • デザイン
    • デザインのあるべき姿を考えて、AIに指示を出せて、レビューができる
  • エンジニアリング
    • フロントエンドやバックエンドの実装やインフラ構築・運用の知見があり、AIに指示を出せて、レビューができる

3つの領域を1人で担えるのか

バックエンドの開発もできて、インフラも立ち上げられるフルスタックエンジニアだって、昔はあり得ないと思われていたのかもしれませんが、ビジネス、デザイン、エンジニアリング、さすがに毛色が違いすぎないでしょうか。

例えば、デザイン力がある人は普段から、デザインそのものに興味があって、そのために時間と脳のキャパを使っています。

私も知っている人で、エンジニアリングもできるUI/UXデザイナーがいます。しかし一方で、別の凄腕エンジニアと比べたら、やはりテクノロジーに対する知見はだいぶ劣ると思われます。そして、ビジネスのありたき姿や業務プロセスを考えられるかというと、うーん…という感じです。

逆もまたしかりです。凄腕のエンジニアを知っていますが、デザインに関する知見があるかというとそうではありません。

エンジニアリングの世界では、バックエンド・インフラだけでなく、フロントエンドも統合した真のフルスタックエンジニアは生まれてきていると思います。これはAIによるところが大きいのではと思います。

しかし、ビジネス、デザイン、エンジニアリングを統合した人材となると・・・人の趣味嗜好、使える時間、脳のキャパなどの制約に鑑みえると、なかなかそんな人材が多く生まれることが想像できません。

得手不得手があるから、チームで動く

ビジネス、デザイン、エンジニアリングのスキルをレーダーチャートにしてみると、AIによって形が少し変わります。

AIのおかげで、ビジネスの人がデザインもエンジニアリングも少しはできるようになります。ただ、やっぱり得意なのはビジネスです。デザイナーも、AIに聞けばビジネスのこともわかるので、少しビジネス的なこともできるようになります。ただ、やっぱり得意なのはデザインです。

得手不得手があるので、チームを組むことで、良いものが生まれるのではないでしょうか。

チームになれば、マネジメントが要る

あれ、PM/PMOがでてきていないよね、と思った方がいらっしゃると思います。そうですね、まだ出てきていません。

ビジネス要求を出す人を、長いので「ビジネス担当」と呼びましょう。このビジネス担当、デザイナー、エンジニアの3人が集まったとします。3人集まると、やはりマネジメントという機能が必要になると思います。

アジャイルでやるとしても、次のようなマネジメント作業が発生します。

  • 会議をセットして、何を議論するかを整理し、議論のための情報を集める
  • 会議をしたら作業を整理して、誰がいつまでにやるかを決める
  • やっているかどうかチェックする
  • 課題やもやもやしたことをリスト化する
  • 課題やもやもやを解決して、アクションに落とし込む
  • いろいろなドキュメントや情報を整理しておく
  • デザイナーとエンジニアが喧嘩したら仲裁する

しかし、ビジネス担当の方が、マネジメントに長けているとは限りません。

ITプロジェクトにかかわったことがある方ならわかると思いますが、業務要件を出す人が、マネジメントをしっかりできるイメージがわくでしょうか。こういうマネジメントが得意な人が、PM/PMOです。

ビジネス担当、デザイナー、エンジニアが集まれば、マネジメントも必要になります。少人数でアジャイルにやるので、スクラムマスターという方が適切でしょうか。いずれにせよ、少人数であっても、マネジメント力を持つ人は必要になると思います。

人が集まる限り、なくならない

得手不得手の問題、そしてそれは人間のモチベーションだったり、時間や脳のキャパの問題ですが、この制約がある以上、1人で全部できるというフルスタックビルダーは、なかなか出てこないのではないかと思います。いないとは言っていません。かなり少ないのではないか、と考えています。

となると、チームを組むことになります。

機能の補完という意味合いもありますが、チームのもう1つのメリットとして、やっぱり人と一緒にやったほうが良いアイデアが生まれたり、楽しかったりする、という意味合いもあると思います。

フルスタックビルダーとして1人でやっていても、いつか限界を感じて、仲間が欲しくなるのではないでしょうか。そしてまた、仲間が集まるとマネジメントが必要になります。

ということで、原理的に、人は集まって何かをやるものであり、そのときには必ずマネジメントが必要になります。ですから、基本的にPM/PMOの仕事はなくならないのではないか、と考察しています。

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