「誰にでも直接連絡すればいい」その思い込みが、大規模プロジェクトでは混乱のもとだった話

JQ NOTE 先輩からの学び

監修者・ライター情報

高橋 完多

JQ プロジェクトマネジメント事業部 コンサルタント

現在、私はある大企業の基幹システム刷新プロジェクトに、顧客側PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)として参画しています。

参画して1〜2週間が経った頃、私が所属する部署とは別の部署の担当者やチームのメンバーと連絡を取る必要が出てきました。課題の相談や進捗確認のために気軽に直接連絡を取ろうとしたとき、先輩から「ちょっと待って」と声をかけられました。

前職はベンチャー企業だったので、誰に連絡するときも特段気にすることなく、直接チャットを送るのが当たり前でした。その感覚があったので、同じプロジェクトに参画している人に直接連絡を取ることの何が問題なのか、わかっていませんでした。

しかし、大規模で多くの会社が関わるプロジェクトでは、勝手がまったく違いました。

他の人がコミュニケーションルート(連絡の経路)を守らずに関係者と連絡を取り、それが問題になる場面を何度か目にする中で、その重要性が少しずつわかってきたのです。

大企業にお勤めの方には、当たり前のことだと感じられるかもしれません。ただ、フラットなベンチャー企業出身の私にとっては新鮮な学びでした。

私の前職と同じような環境で働いている方に向けて、そこで得た学びをまとめます。

ルート相手を飛ばすと、現場が混乱する

先輩は、このように教えてくれました。

「コミュニケーションルートを守らないことでハレーションにつながる。例えば、チームAのメンバーに、チームAのリーダーの知らないところでタスクを依頼するとする。そうするとリーダーの知らないタスクのためにチームの工数が勝手に使われ、本来予定していたタスクに遅延が発生し、問題になりやすい」

ハレーションとは、関係者の間で摩擦や混乱が生じることを指します。

最初に聞いたときは、理屈としては理解できたものの、それがどれほど重要なことなのかまでは、まだピンと来ていませんでした。

その後、実際にハレーションが起きた場面を目の当たりにしました。

プロジェクトの複数のメンバーが、プロジェクトの体制には入っていない現行システムの運用グループへ個別に連絡を取っていたところ、運用グループ側から「やりとりは窓口を通してほしい」と、かなり強い表現で不満が表明されたのです。

運用グループからすれば、色々なところから相談や質問が来ます。1件であれば快く対応してもらえるでしょうが、複数人から来るとそれなりに時間を取られます。

同グループのマネジメント側から見れば、想定外のタスクの積み重ねが進捗に影響しかねない状況です。

この件は最終的にPM(プロジェクトマネージャー)まで話が及び、私が所属するチームでルールを定めることになりました。

連絡前に「誰を通すか」を考える

問題は工数の話だけにとどまらず、本来通すべき相手を飛ばしたこと自体が大問題なのだと、このときわかってきました。

最初はマナーの問題だと捉えていましたが、こうした場面でその都度説明を受けるうちに、コミュニケーションルートを守ることは、プロジェクト全体の進捗に影響することなのだと理解するようになりました。

先輩の教えを受けて、連絡したことのない相手と接点を持つときは、まず誰を経由して話を通すべきかを考えるようになりました。

とはいえ、最初からうまくできたわけではありません。

最初は間違ったルートで連絡しようとして、「違う、この人を通すべきだ」と指摘を受けたりしました。

タスクを依頼するときにも、誰のタスクになるかがわかっていたために、担当者へ直接連絡してしまったことがあります。そのときは担当者本人から「ここを通してほしい」と指摘を受け、本来通すべき相手を飛ばしていたことに気づかされました。

今は、どのような連絡や相談をしたいかに応じて、体制図を確認しながら連絡先を調べています。

この習慣を持つようになってからは、コミュニケーションルートを大きく間違えることはなくなりました。

ルートの本質は「責任の所在」

この学びの本質は、責任の所在を明らかにする必要があるという点だと理解しています。

たとえばチーム内のタスクは、そのチーム全体の工数を管理するリーダーが責任を持っています。だからこそ、メンバーへの依頼はリーダーを通すべきです。リーダーを飛び越えて依頼してしまうと、誰の管理下でその依頼のために工数を使っているのかが不明瞭になります。

別グループとのやり取りも、窓口という形で責任の所在を一つに定めておけば、関係者は迷わずそこへ問い合わせられます。

コミュニケーションルートが明確であれば、相談先に悩んだり、関係ない人に相談してしまったりするロスがなくなります。結果的に、各タスクの進行や課題検討の依頼がスムーズに行われ、プロジェクトが滞りなく動き出します。

反対に、コミュニケーションルートが曖昧なままだと、誰に何を相談すればよいかわからず、確認のたびにやり取りが増え、進行が停滞してしまいます。

遠回りに見えて、一番の近道

私たちはマネジメントをする立場でプロジェクトに参画しているからこそ、私たち自身がコミュニケーションルートを守るべきだと考えています。

それが、ひいてはプロジェクト全体のコミュニケーションルールの遵守と、円滑な進行につながります。

適切な相手に適切な依頼や相談をするためには、一歩遠回りに見えても、まず体制図を見て責任者を見極め、誰に話を通すかを確認するところから始めるべきです。

最初に責任者を押さえておけば、後の混乱を防げます。

誰に連絡すればよいかわからないときほど、「えいやっ!」で連絡するのではなく、丁寧に一つずつ正しいコミュニケーションルートをたどる。

それが遠回りのようでいて、一番の近道です。

ご相談・お問い合わせ プロジェクトの要件が明確でなくても問題ございませんので、まずはお気軽にご相談ください。