起票時に効くルール、起票後に効くルール
肥大化を防ぐために、まず台帳の運用面から整理します。やるべきことは2段階に分かれます。
起票時の質を高める:定義と粒度を揃える
各項目に何をどの程度記載するか定義を明確にし、内容と粒度を揃えること。
しっかり記載されていれば、内容確認の時間が短縮でき、認識齟齬も防げます。担当者が替わるときの引継ぎ負担も減ります。
そして、管理項目を増やしすぎないこと。
プロジェクト開始時は分析用にあれもこれもと列を増やしがちですが、管理項目が増えるほど従うべきルールが増え、入力負荷が上がります。
ルールを徹底するためには、まず負荷を減らす努力が必要です。
起票後の品質を維持する:PMOによる定期チェック
規模が大きいプロジェクトではPMOを置き、内容チェックと期限管理を担当させる。
PMOが定期的にチェックすることで、入力品質の低下と、放置による期限切れを防ぎます。
短時間で完了できるものは速やかに片付けて残件数を減らす。
長らく保留状態の課題は、思い切っていったん完了する。
本当に課題性があるものなら、再度起票されるはず、と割り切ってしまう判断もあります。
ここまでは、台帳運用の基本です。多くのPMOがすでにやっていることでもあります。
それでも台帳は肥大化する。原因は「外側」にある
しかし、これらの対策を講じても、課題管理台帳が肥大化してしまうことがあります。
原因は、台帳の外側にあります。
一つ目は、課題の多くが特定の担当者に集中し、ボトルネックが生じているケース。
どれだけ期限管理を徹底しても、対応できる人が限られていれば、課題は滞留します。台帳の運用を改善しても、この問題は解決しません。
二つ目は、メンバーの業務負荷が高く、課題対応の優先度が下がるケース。
プロジェクトメンバーは課題対応だけをしているわけではありません。
設計や開発、テストといった本来業務に追われていれば、課題対応は後回しになります。
これらは、課題管理台帳の運用を改善しただけでは解決できません。対応に必要なスキルを持った要員を追加するなど、別の手当が必要になります。
つまり、課題管理台帳の肥大化には、台帳の運用で解決できるものと、台帳の外側にある要因を解決しなければならないものの2種類がある、ということです。
いくら台帳の運用が素晴らしくても、肥大化を防げないことがある。
これを認識せずに台帳の運用ばかり叩き直すと、無駄な工数だけが積み上がります。
肥大化したあとの立て直し方
すでに肥大化してしまった現場では、JQが現場で実践してきた方針として、まず棚卸しをして優先度を整理するところから始めます。
優先度が低いものは対応を見送るか、一定期間先送りするなどして、向き合う課題の件数を「管理できるレベルまで」減らす。
大量に課題がありすぎると、見る気が完全に失せます。
一定数に抑えられていれば、見る気と対応する気持ちが戻ってきます。ここが立て直しの起点です。
要員追加ができる場合は、既存要員と追加要員の作業分担を再整理して、課題解決のための工数を確保します。
追加できない場合は、課題の担当を見直すなどして対応する。
毎週の進捗報告では、課題件数の発生・減少傾向をチェックし、適切な対応がとられるようにします。
プロマネが「責任をもって判断」する
棚卸しを実践するうえで、最も重要なのは、優先度や期限を見直す際の姿勢です。
「忙しいから先送りする」では、問題を先延ばしにするだけで、何の解決にもなりません。
プロマネが責任をもって、一つひとつの課題に対して判断を下していくこと、必要に応じ取捨選択すること。
これが立て直しの本丸です。PMOの役割は、プロマネが正しく判断できるように支援することにあります。
正確な情報と問題解消に向けたアイデアをプロマネに提示することで、意思決定を助ける。
代わりに判断するのではなく、プロマネが正しく判断できる環境を整えるのが、PMOの仕事です。
課題管理台帳は、プロジェクトの健全性を映す鏡
課題管理台帳の肥大化を防ぐには、台帳の運用を改善するのが基本です。
しかし、それでも課題が増え続けてしまうときは、特定の担当者へ集中しボトルネックが発生していないか、業務負荷により課題対応の優先度が低下していないかといった、台帳の外側にある要因にも目を向ける必要があります。
それでも肥大化してしまった場合には、棚卸しによる優先度の見直しを起点に立て直しを図る。
見直しの際は、安易に期限だけ先延ばしせず、必要に応じて課題の取捨選択をするなど、プロマネが責任をもって判断を下す必要があります。
課題管理台帳は、プロジェクトの健全性を映す鏡です。
台帳が肥大化しているということは、プロジェクトのどこかに問題があるということ。
運用と体制の両面から向き合い、原因を見極めて対処していくことが、プロジェクトを成功に導く鍵となります。