課題管理台帳が肥大化して破綻するプロジェクト

JQ NOTE ベースナレッジ

監修者・ライター情報

広瀬 浩司

JQ プロジェクトマネジメント事業部 シニアマネージャー

プロジェクトを進めていく中で、課題管理台帳の残課題がどんどん増えていく。
最初は数十件だったものが、気づけば百件を軽く超えている。課題の解消が思うように進まず、確認や更新にかかる時間も増え続ける。

こうした状況に心当たりはないでしょうか。起票のペースが完了のペースを上回り、向き合う課題が増え続け、台帳の確認や更新にかかる時間も増えるという悪循環に陥る。そのうち管理が追いつかなくなり、定期的に見ることすら難しくなっていく。Excelでもチケット管理ツールでも大量にありすぎると、開くのも億劫になってしまう。

課題管理台帳の肥大化は、多くのプロジェクトが直面する問題です。しかし、なぜ肥大化してしまうのか、どうすれば防げるのか、そして肥大化してしまった場合にどう立て直すのか。その答えを持っているプロジェクトは少ないのが現実です。

前提

この記事は、顧客側でマルチベンダーをコントロールする全体PMOの立場で記述しています。PMは顧客企業の社員の方になります。

肥大化を防ぐための対策

課題管理台帳の肥大化を防ぐために、私が現場で実践している取り組みを紹介します。

起票時の対策

まずは起票の質を高める必要があります。

質を高める方法として、記載ルールや更新ルールをしっかり整えることが重要です。各項目に何をどの程度記載すればよいのか定義を明確にし、記載内容や粒度のレベル感が揃うようにします。しっかり記載されていると、内容確認にかかる時間を抑制でき、認識齟齬も防げます。また、こうしておくことで、課題対応中に担当者が替わる際の引継ぎにかかる負担も減らすことができます。

あわせて、管理項目を増やしすぎず必要最低限にすることも重要です。プロジェクト開始当初は、分析用にあれもこれもといろいろな項目を増やしがちです。管理項目が増えると、従わなければいけないルールも増えるということになります。ルールを徹底するためには負荷も減らす努力が必要です。

起票後の対策

規模が大きいプロジェクトではPMOを設置し、内容チェックと期限管理を担当させます。PMOが定期的にチェックし、内容確認や修正、修正指示をすることで、入力内容の質が低下することと、放置による期限切れを防ぎます。

さらに、短時間で完了できるものは速やかに完了して残件数を減らしていくことも重要です。課題が増えすぎる前に一定件数内に抑えるように管理していきます。

また、長らく保留状態となっている課題についても、一旦完了してしまうのも1つのやり方です。本当に課題性があるものであれば再度起票されるはず、と割り切ってしまうのです。

これらを意識して運用することで、ある程度は肥大化を防げるはずです。

台帳の外側にある肥大化の要因

しかし、これらの対策を講じても、課題管理台帳が肥大化してしまうことがあります。

課題管理台帳の外側にある要因が課題解消の妨げとなり、なかなか課題が減らないということが起きます。

一つ目は、課題の多くが特定の担当者に集中し、ボトルネックが生じているケースです。どれだけ期限管理を徹底しても、対応できる人が限られていれば、課題は滞留していきます。台帳の運用を改善しても、この問題は解決しません。

二つ目は、メンバーの業務負荷が高い場合に、課題対応の優先度が下がり対応が進まなくなるケースです。プロジェクトメンバーは課題対応だけをしているわけではありません。設計や開発、テストなど本来の業務に追われていれば、課題対応は後回しになりがちです。

これらは、課題管理台帳の運用を改善することでは解決できません。
対応に必要なスキルを持った要員を追加するなど、別の対応策が必要になります。

つまり、課題管理台帳の肥大化の原因には、台帳の運用で解決できるものと、台帳の外側にある要因を解決しなければならないものの2種類があるということです。いくら台帳の運用が素晴らしくても、肥大化を防げないことがあります。

肥大化した場合の対処法

まずは課題の棚卸しをして、優先度を整理します。優先度が低いものは対応を見送るか、一定期間先送りするなどして、向き合う課題の件数を「管理できるレベルまで」減らします。大量に課題がありすぎると、見る気もうせてしまうと思いますが、一定数に抑えられていれば見る気と対応する気持ちになれると思います。

また、要員追加ができる場合は既存要員と追加要員の作業分担を再整理して、課題解決のための工数を確保します。追加できない場合は、課題の担当を見直すなどして対応します。
毎週の進捗報告では、課題件数の発生・減少傾向をチェックし、適切な対応がとられるようにします。

実践する際に忘れてはいけないポイント

棚卸しを実践する上で、いくつか重要な注意点があります。
重要なのは、優先度や期限を見直す際の姿勢です。
「忙しいから先送りする」では、問題を先延ばしにするだけで何の解決にもなりません。PMが責任をもって、一つ一つの課題に対して判断を下していくことが求められます。

PMOの役割は、PMが正しく判断できるように支援することです。
正確な情報と問題解消に向けたアイデアをPMに提示することで意思決定を助けます。代わりに判断するのではなく、PMが正しく判断できる環境を整えることが重要です。

まとめ

課題管理台帳の肥大化を防ぐには、台帳の運用を改善するのが基本ですが、それでも課題が増え続けてしまうことがあります。
その場合、特定の担当者へ集中しボトルネックが発生していないか、業務負荷により課題対応の優先度が低下していないかといった、台帳の外側にある要因にも目を向けて対処する必要があります。

それでも肥大化してしまった場合には、棚卸しによる優先度の見直しを起点にして立て直しを図ります。
見直しの際は、安易に期限だけ先延ばしせず、必要に応じ課題の取捨選択をするなど、PMが責任をもって判断を下す必要があることを忘れてはいけません。

課題管理台帳は、プロジェクトの健全性を映す鏡です。
台帳が肥大化しているということは、プロジェクトのどこかに問題があるということです。運用と体制の両面から向き合い、原因を見極めて対処していくことが、プロジェクトを成功に導く鍵となります。

ご相談・お問い合わせ プロジェクトの要件が明確でなくても問題ございませんので、まずはお気軽にご相談ください。