会議を推進できないファシリテーターに欠けているもの

JQ NOTE ベースナレッジ

監修者・ライター情報

広瀬 浩司

JQ プロジェクトマネジメント事業部 シニアマネージャー

プロジェクトの定例会議で、ファシリテーターとして進行を任されたとき、議論がなかなか先に進まないなと思うことはないでしょうか。
アジェンダは事前に送付した。論点も整理した。時間配分も決めた。準備は万全のはずなのに、いざ会議が始まると議論がかみ合わない。参加者の話が長くなり、気づけば論点が逸れている。結論が出ないまま時間切れになってしまう。

こうした状況に直面したとき、「もっと準備が必要だったのか」と考えるかもしれません。
あるいは「参加者に問題がある」と考えるかもしれません。しかし、本当にそれだけが原因なのでしょうか。会議を推進できるファシリテーターとそうでないファシリテーターの違いは、どこにあるのでしょうか。

まずは会議前の準備をしっかり行う

会議の推進がうまくいかない問題を避けるために、まずやるべきことは「会議前の準備を徹底する」ということです。

具体的には、まずアジェンダを作成します。会議の目的を明確に定め、議題を漏れなく列挙し、議題ごとに会議でのゴールを設定します。さらに議題ごとの時間配分を決め、主担当者を把握しておくことも重要です。
また、議論する内容を事前にしっかり読み込んでおくことも重要です。背景や前提を押さえていないと、「わかってない感」のあるファシリテーターになってしまいます。

そして、アジェンダや資料を事前に送付します。参加者が確実に目を通せるよう、前日までに送付し、参加者にも準備を促します。前回会議の宿題があれば、忘れないように釘を刺すことも必要です。

準備を万全にしても会議がかみ合わない現実

しかし、実際のプロジェクトの現場では、どれだけ準備を徹底しても会議がうまくいかないケースが発生します。特に深刻なのが、話がかみ合わないという問題です。

なぜ話がかみ合わないのか。
その理由の一つ目は、ファシリテーター側の理解力に問題があるケースです。ファシリテーターが討議事項の内容や論点を深く理解していない場合、オープンクエスチョンを全体に対して投げかけてしまい、全員が沈黙してしまう、というようなことが起きえます。
あるいは、相手の意図を汲み取れず、質問に対して答えがズレてしまうこともあります。アジェンダは用意できても、討議内容や論点を理解できなければ、議論を前に進めることはできません。

二つ目は、参加者側に問題があるケースです。これはよくあることですが、特定の参加者の話が長すぎたり、参加者が複数の論点を混ぜて話を複雑にしてきたりすることで、議論がかみ合わなくなるケースがよくあります。

このような問題が起きている会議では、時間内で討議の結論が導けないということになります。
その結果、決めるべきことが決まらないまま次の会議に持ち越され、課題リストだけが肥大化していきます。多くの課題は、進捗に影響を与えるため、結果として進捗の遅延にもつながる恐れがあります。

さらに問題なのが、会議で決まらなかったことが、立ち話など別の場で結論が出されてしまう、というケースです。
一部のメンバーだけで決めてしまい、しかもそれをしっかり共有しないことで、後になって、その立ち話に参加していない人が「そんな話は聞いていない」と言い出して、トラブルになるようなことがあります

理解力と参加者の協力を引き出すアプローチ

ファシリテーターとして、これらの問題の発生を防ぎ、会議の中で討議事項について、一定の結論に導くためには、準備だけでなく、ロジカルシンキング能力を高めることが必要になります。

ロジカルに考える力がなければ、参加者の発言のポイントを理解できませんし、複数の論点が混在していても整理できません。逸れた議論を軌道修正する判断もできません。

ロジカルシンキングを身に着けるには、まずはMECEやグルーピング、So What、Why So、抽象化と具体化などのロジカルシンキングのポイントを知ること、そして実践の場で繰り返し、そのポイントを使ってみることが重要です。

例えば、ロジカルシンキングの実践として、会議の場で以下のようなアクションを取ってみることをお勧めします。

第一に、相手の意図を理解できているか口頭で確認することです。相手の発言が長い場合に、ある程度の長さに区切りながら確認していきます。
復唱するのもおすすめです。例えば、「今のお話は、〇〇という理解で合っていますか?」と確認することで、自分の理解が正しいかを検証できます。
この時のポイントは、So What(つまり何を言いたいのか)を押さえることです。YESなのかNOなのか、A案なのかB案なのか、はたまた誰が何をするということなのか、これらのSo Whatを明示することで、「いや、そうじゃない」「そのとおり」とだんだん議論が深まっていきます。

第二に、要点を文字に起こしてその場で共有することです。ホワイトボードや画面共有を使って、議論の要点を文字に起こしてみます。
相手も基本的には主義主張があり、それを周りに理解してもらいたいので、正確かつ分かりやすい表現で言い換えてくれたり、要点の整理や構造化に協力してくれたりします。ここでもSo Whatを明らかにすることを意識しましょう。

So Whatを導くためには、本来、抽象的な議論の具体化を行うことや、Why So(どんな背景、原因、理由、目的?)の理解が求められます。ただ、いきなりすべてはできないので、まずはSo Whatが何なのかを考えるところから入ることがお勧めです。

なお、このアクションを行うメリットとして、ファシリテーターと参加者が協働で議論を整理できるということもあげられます。一方的に進行するのではなく、参加者の力を借りることで、議論の質が高まりますし、皆で結論を出すという主体性も生まれます。自分が主体的に議論したことは、後になって「聞いていない」「そうじゃない」とは言いづらいものです。

実際に、経験の浅いPMに事前準備をしっかり行うことをアドバイスし、会議進行時の2つのアクションのお手本も見せた上で実践してもらいました。
会議中に会議資料に要点メモ(決定事項・宿題)を書き込むことについては、当初は文章の質があまりよくないこともありリズムが出ないこともありました。しかし、助言も行い、段々と慣れてきてからは会議中にしっかり論点が整理されて、議論の質が高まるようになりました。
明らかに会議進行の質はあがったのです。その結果、段々と会議内で議論を終わらせることができるようになりました。

なお、会議中に作成した要点メモは、メモは会議後に多少体裁を整えるだけで議事メモの代替として活用できるので、会議後の議事メモ作成の作業時間も短縮できました。

実践する際に忘れてはいけない基本姿勢

このアクションを実践する上で、最も重要な注意点があります。それは、相手の話は遮ることなく最後までしっかり聞くという基本姿勢です。

口頭確認や文字起こしは、参加者の協力を引き出すための手法です。しかし、相手の話を途中で遮って確認したり、勝手に要約したりすると、相手は「自分の話を聞いてもらえていない」と感じてしまいます。

協力的なスタンスを引き出すには、まず相手の話を最後まで聞くことが大前提です。
話し終わってから、「今のお話を整理すると、こういうことでしょうか」と確認するのが正しいアプローチです。

特に有識者や上位者の発言を途中で遮ることは、関係性を損なうリスクがあります。
話が長くても、論点が複数混在していても、まずは最後まで聞く。そして、「重要なポイントがいくつかあったと思いますので、整理させてください」と切り出してから確認していくことが重要です。

焦って議論を整理しようとするあまり、相手の話を遮ってしまうと、かえって協力が得られなくなります。
ファシリテーターは議論を効率的に進めるだけでなく、参加者全員が納得できる場を作ることも役割です。傾聴の姿勢を忘れてはいけません。

まとめ:準備とロジカルシンキング、そして協働の姿勢

会議を推進できるファシリテーターになるためには、以下の3つのポイントがあります。

①事前準備をしっかり行う
事前準備は重要です。この会議で何を議論すべきなのか、どんな内容を議論するのかをしっかり押さえておきます。

②ロジカルシンキングを鍛える、実践する
会議では論点が輻輳しがちです。議論を整理する力を養いつつも、会議の場で、口頭で要点を確認する、その場で要点メモを書いて共有するなどして、参加者を議論に巻き込み、参加者の力を借りながら、結論に導いていきます。

③傾聴の姿勢を持つ
リスペクトをもって相手の話をしっかり聞き切ります。参加者がしっかり話を聞いてもらえたと思ってもらうことで、同じ結論だとしても、納得感に違いがでます。

完璧なファシリテーションの正解はありませんが、会議でしっかり結論を導こうという意思を持ち、そのための準備・努力をし、参加者にリスペクトを持ち、巻き込んでいくという姿勢は普遍的に重要なものではないかと思います

ご相談・お問い合わせ プロジェクトの要件が明確でなくても問題ございませんので、まずはお気軽にご相談ください。