レストランチェーンにおけるデリバリーシステム構築プロジェクト

事例紹介 事例

監修者・ライター情報

JQ コンテンツ

背景

あるレストランチェーンは、宅配需要の増加を見据え、デリバリーサービス事業を将来的な成長戦略の中核として計画していました。既存のWebサービスはありましたが、使い勝手の悪さや画一的な価格設定しかできない点、クーポン配布ができないなどの問題がありました。既存システムでは、これからデリバリーサービス市場で競争力を持って戦っていくのは難しい状況でした。

経営陣からの強い要望もあり、プロジェクト開始から11ヶ月以内という短期間でリリースをする必要がありました。その後の保守開発フェーズでは、予期せぬコロナ禍による急激な需要増加への対応に伴うサービス安定化、さらには配達員が利用するアプリの保守運用も担当することになりました。

プロセス

初期開発フェーズでの業務範囲拡大と調整力獲得

私がプロジェクトに参画したのは基本設計フェーズからで、ポジションは開発ベンダー側のPMOでした。本来は、進捗管理が主要な役割でしたが、QAや課題管理も対応しているうちに、システム仕様についての理解が深まるにつれ、クライアントと要件調整する役割も担うようになりました。

正直なところ、必要に迫られたというのはありますが、結果としては、PMOの本来の管理・推進というスコープを超えてしまった、という感覚を持っていました。
しかし、この一連のプロセスを通じて、要件およびシステム仕様をどのように調整するか、また基本設計や詳細設計から実装、テスト、リリースに至るまで各工程で、エンジニアが具体的にどのような仕事をするのか、またどのような品質基準を守っていくのかを、身をもって理解することができました。また、お客様とのコミュニケーションを通じた要件や仕様の決定プロセスや、Web システムの基本的なシステム構成に関する技術的理解も大幅に向上しました。

コロナ禍対応でのサービス安定化と負荷対策

リリース後は、保守プロマネとしてプロジェクトを推進することになりました。
しかし、リリース3ヶ月後にコロナ禍が始まり、デリバリーサービスの利用者が急激に増加しました。当初想定していた利用者増加のペースを一瞬で突き抜け、アクセス数が2倍から3倍に達するという予想外の状況になりました。その結果、サーバーダウンなどの技術的問題が頻発し、緊急対応が必要となりました。

この段階で私自身の大きな課題が、システムの負荷対応の深い理解でした。負荷試験の目的や指標の設定方法、インフラのチューニングの考え方など、これまで表面的にしか理解していなかった技術領域を実践的に学ぶ必要がありました。同時に、リモートワークへの移行により、従来の対面コミュニケーションから定期的なミーティングとドキュメント化を重視した情報共有体制への転換も求められました。

社内のエキスパートからの指導を受けながら現場で学習し、毎日の定例ミーティングでの進捗管理と課題の可視化を徹底しました。また、ロジカルに情報を伝えるためのスライド作成とメモ作成のスキルを向上させ、リモート環境での効果的なコミュニケーションのやりかたを自分なりに確立していきました。結果として、急激な負荷増加にも対応でき、安定的なサービス運用と、継続的なサービス改善を実現することができました。

全体統括と配達システム統合による包括的運用体制構築

プロジェクト後期では、Webオーダーシステムだけでなく、配達員が使用する配達管理アプリの保守運用を担当することになりました。配達管理アプリは要件定義書や設計書が存在せず、ソースコードしかないという状況で、顧客からの改修要望に対応する必要がありました。

ここで難しかったのは、改修による影響調査でした。設計書類がないので、顧客の要望を受けて、エンジニアと協力して影響範囲と対応方法のあたりをつけて、検証を行い、顧客に対応方針を示すという作業が必要になりました。要件があって、設計があって、実装という流れに対して、実装できそうかどうかを検証したうえで、要件の対応可否を顧客に伝えるという逆のアプローチが必要になりました。

半年間の取り組みを通じて、システム全体を理解した上で要件の当たりをつける能力と、不明瞭な状態であっても仮説を立てて検証するというを身につけることができました。顧客の対応窓口として信頼関係を構築し、クレームを受けることなく安定的なサービス運用を継続できたことが、保守プロマネとしての大きな成果でした。

結果

このプロジェクトでは5年間の長期にわたって、安定的な運用と、継続的なサービス改善を実現することができました。特筆すべきは、コロナ禍という予期せぬ事態に対して、インフラの強化などの技術的な部分と、機能追加等のビジネス的な部分の両面で迅速に対応できたことです。成功要因として、以下の点が挙げられます。

  1. 継続的な学習姿勢:未経験の技術領域や業務領域に対して、現場での実践を通じた知識習得を継続したこと。
  2. 社内リソースの効果的活用:技術的な課題解決において、社内のエキスパートとの連携を密にし、現場に適用可能な知識を効率的に獲得したこと。
  3. 柔軟な役割適応能力:PMOから保守プロマネへの役割変化と、プロジェクトのニーズに応じて柔軟に対応したこと。

結果として、クライアントから一定の評価をいただき、5年間を通じて安定的なパートナーシップを維持することができました。「まずJQさんに相談してみよう」という信頼関係を構築できたのがなによりうれしかったことです。このプロジェクトで得た一通りの開発と保守経験とインフラ面の知見、またあいまいな状況下で仮説をもってものごとを進める力は、今後も様々なプロジェクトにおいて大いに活用できるものと思っています。

ご相談・お問い合わせ プロジェクトの要件が明確でなくても問題ございませんので、まずはお気軽にご相談ください。