前提
この記事は、開発プロジェクトの開発側のプロジェクトマネジメントに関する記事です。
ステータス更新が滞る理由
なぜメンバーはステータス更新を怠ってしまうのでしょうか。
現場を観察していると、いくつかの理由が見えてきます。
ひとつめに、日々忙しいと忘れてしまうということがあります。
設計作業に集中していると、ステータス更新という「本来の作業ではないこと」が後回しになります。
一日の終わりに更新しようと思っていても、そのまま忘れてしまう。
次に、そもそも更新ルールが頭に入っていないケースがあります。
プロジェクト開始時に説明を受けても、日が経つにつれてルールの詳細を忘れてしまう。
どのタイミングでどのステータスに変更すべきか、曖昧なまま作業を進めてしまいます。
最後に、更新するメリットがわかっていないという問題があります。
メンバーからすると、「なぜこまめにステータスを更新しなければならないのか」が腹落ちしていない。
義務感だけでは、習慣として定着しません。
このような理由から、ステータス更新を依頼しても実際には滞ってしまいがちです。
これについて一方的にメンバーを責められるものではありません。
忙しい現場で、進捗管理の重要性を理解して報告を継続してもらうことは簡単ではないからです。
しかし、この状況を放置すると、プロジェクトに深刻な問題が発生します。
正しい進捗が見えなくなる現実
ステータス更新が滞ることで、PM/PMOは正しい判断ができなくなります。
まず大きな問題は、残り工数が把握できなくなることです。
設計書作成の進捗率は、作業ステータスに応じたパーセントをかけて算出することが多いでしょう。
例えば、作成中なら10%、セルフレビュー完了なら30%、というように。
この割合を設計書作成着手から完了までの合計想定工数に掛け算することで残り工数がわかります。
しかし、正しい作業ステータスに更新されていないと、正しい残り工数がわからなくなり、正しい判断ができなくなってしまいます。
次に、柔軟なタスク管理ができなくなります。
設計書作成が完了し、メンバーが手すきになっているのであれば、次のタスクを割り当てたり、進捗が芳しくないメンバーのヘルプをしてもらうなどの対応をしたい。
しかし、作業ステータスが進んでいないため、誰が手すきで誰が忙しいのかがわからず、正しい割り当てができません。
さらに、工程の終了見込みが不透明になります。
個々の設計書の進捗が正確に把握できないと、工程全体がいつ終わるのかの見通しが立ちません。
結果として、問題が顕在化するのが遅れ、対策を打つタイミングを逃してしまいます。
以前担当したプロジェクトでは、ステータス更新が1週間以上滞っているメンバーが複数いました。
実際には作業が完了していたにもかかわらず、ステータス上は「作成中」のまま。
結果として、新たなタスクの割り当てが遅れて無駄な待機コストがかかってしまいました。
それはまだ良いとしても、進捗が滞っている他のメンバーへのヘルプが遅れ、工程全体の遅れにつながりました。
進捗報告を習慣化させる3つのアプローチ
このような課題に対しては、私たちPM・PMOは、進捗報告を習慣化させるよう工夫を重ねる必要があります。
第一に、プロジェクトをチームに分けて、チームリーダーに進捗管理の責任を持たせます。
チームリーダーに定期的な報告機会を設け、チームリーダー自身にチームの進捗状況を説明させます。
自分で説明する責任があれば、チームリーダーはメンバーの進捗を把握せざるを得なくなります。
これにより、PM/PMOが全メンバーの進捗を直接追いかける必要がなくなり、管理の負荷が分散されます。
第二に、各メンバーに作業ステータスの更新を思い出させる仕組化をします。
習慣化のためには、日報の仕組みを導入したり、チャットツールのbotで自動リマインドを送るなどの工夫が有効です。
「毎日17時にステータスを更新する」といったルールを、仕組みで支えることで定着させます。
第三に、そして最も大事なのが、PM/PMOが進捗報告を読んでくれていて、必要に応じて対策を打ってくれる、とメンバーが感じてくれるようにすることです。
具体的には、進捗の報告内容を読み、大きなマイルストーンを越えたときは称賛する。
進捗が滞っているのを検知して、「どうしたのか」と聞いてくれる。
そして原因に対する対策を一緒に考えてあげる、他メンバーのヘルプアサインを調整してくれる、期日調整をしてくれるなど何らかの対策を考えてくれる。
よくないのは、後述しますが、自動ツールでただひたすら期限切れを通知するだけ、という対応です。
この方針の最大のメリットは、メンバーが「報告する意味がある」と感じてくれることです。
PM/PMOが自分の報告を見てくれている、困ったときは助けてくれる、という信頼関係ができれば、ステータス更新は習慣として定着します。
実践する際の重要な注意点
この方法を実践する上で、いくつか重要な注意点があります。
まず、PM/PMOは作業内容を理解しつつも、機械的に進捗を評価することです。
PM/PMOが作業内容を理解していないと、「この人に話しても意味がない」とメンバーに思われ、だんだん適当な報告になってしまいます。
悪い場合には虚偽報告につながります。
しかし、作業内容を理解しすぎると、メンバーの気持ちもわかるので管理が甘くなってしまう。
遅れているのに、この機能は難しいから、遅れともいえないよね、という情状酌量的な評価をしてしまう恐れがあります。
作業の難しさや担当の忙しさを理解しつつも、進捗状況は機械的に評価しなければなりません。
遅れは遅れです、と。
次に、チームリーダーを飛び越えてメンバーに直接確認しないことです。
いったんチームリーダーに任せている以上、進捗確認はチームリーダーを通して行うべきです。
飛び越えてメンバーの進捗管理をすると、チームリーダーの責任感がなくなってしまいます。
チームリーダーが機能しない場合は、チームリーダー自身の課題として対処すべきです。
最後に、報告してくれない人を放置しないことです。
残念ながら、通知に反応してくれるのはまめな担当であることが多く、そういったひとは通知がなくても報告してくれるし、更新しない人は通知だけしても無視するだけのことが多いです。
しかし、それをそのまま放置すると「報告しなくてもいいのか」という空気が他のメンバーにも蔓延します。
一人を放置することで、全体の規律が崩れてしまうのです。
botのような通知だけで終わらず、丁寧な声がけを心がけましょう。
正確な進捗把握がプロジェクト成功の土台
進捗管理において最も重要なのは、小さな積み重ねが工程やプロジェクト全体の成否にかかわってくるという認識です。
正確に、自律的に進捗状況が把握できるようになることが、プロジェクト成功の一丁目一番地です。
正しく把握できているから問題発生を検知でき、正しい対策を打てます。
一般的な進捗管理では、ステータス更新をメンバーに依頼するだけで終わってしまいがちです。
しかし、それだけでは更新は滞り、正確な進捗は見えなくなります。
チームリーダーへの権限委譲、習慣化の仕組み、PM/PMOの能動的な関与。この3つを組み合わせることで、進捗管理は初めて機能します。
ただし、管理のための管理になってはいけません。
メンバーが「報告する意味がある」と感じられるよう、PM/PMOは報告を読み、称賛し、問題があれば対策を打つ。
この姿勢こそが、進捗管理を形骸化させない鍵となります。
完璧な進捗管理はありません。
しかし、正確な進捗把握を追求する姿勢こそが、プロジェクトを成功に導く土台となるのです。